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Okeno Catanikus +T

非電源卓上遊戯の話題をつらつら綴ったり綴らなかったり。

ワンス・アポン・ア・タイム

 

最後まで泣くんじゃn…け、結末はどこへ…?

f:id:conekoneko:20141005152400j:plain1993年初版、今年になってようやく待ち望まれていた日本語化が実現した、『物語が生まれるカードゲーム』。その銘打ち通り、プレイヤーが手札を使って物語を紡いでいく、というゲームだ。システムそれ自体に(一般的なボードゲームで言うところの)戦略性や思考性は無いため、ボードゲームというよりパーティゲームと言った方が通りは良いと思う。

プレイヤーには数枚の『物語カード』と一枚の『結末カード』が配られる。これらを全て出しきれば勝ちなのだが、カードを出すには条件がある。それは出すカードに描かれた要素が、語られている物語に繋がるものであること。語り手のプレイヤーが『大きな赤い家』と言ったら、『大きい』『赤い』『家』などのカードを出すことができる。カードを出すと、以降は手札を出したプレイヤーが語り手となり、物語を語り続ける。
ここで注意したいのが、カードを出す条件は前述の通りだが、それにはあくまで物語に関係していなくてはならない、ということ。例えば自分の手札に馬、王子、鍋があったとして、『王子が通りかかった村には馬が居て、鍋には料理が煮込まれていて』というように、物語に直接関係のない描写(要するにモブ)の要素として手札を出す事はできない、ということだ。また、手札は一文で一枚しか出せない、という制限もある。これらを踏まえて上記の例をプレイするなら、『王子は姫を助けにいく決意をしました。ですが、兜を無くしてしまったので鍋を被りました。そして馬に乗って、魔女の森へと向かったのです』とでもすれば良いだろうか。この辺りはプレイヤーの腕の見せ所だ。
さて、とあるプレイヤーが語り部である時、他のプレイヤーはただ聞いているだけかというと、そうでもない。語られている物語に繋がる要素の物語カードであれば出して語り部になれるし、それとは別に『割り込みカード』というものも存在する。これは語られている物語が特定の条件を満たすと、『実は…!』と言って物語に割り込みをかけるとができるものだ。これにより語り手が思いもしなかった方向に物語が展開していき、結末が誰にも分からない、その場限りのストーリーが紡がれていくことになる。
最初に配られた『結末カード』を今語られている物語の締めに上手く出せればゲーム終了となる。だが、やはり自分の手札だけでは物語を結末まで語るのは難しいし、かといって場の流れに任せっぱなしだと、結末カードが出せないまま他の語り手が上がってしまう可能性も出てくる。多少強引に物語を引き寄せ、上手く結末へと持っていく、想像力と見極めが重要なゲームだ。ちなみに、物語の展開が(無茶苦茶すぎる、矛盾が生じている、バカプレイなど)あまりに酷いと他プレイヤーが待ったをかけることができる。この辺りは説明書にも明記されているが、判断はプレイヤーの感覚に委ねられていて、ルールとしてはかなり曖昧な部分である。この手のゲームでは仕方のない要素なので、割り切ることも大事である。


ボードゲーム界隈のニュースサイト等でこのゲームの存在は知っていたが、プレイする機会が訪れるとは思ってもみなかった。最近こういったパーティーゲーム寄りのものからはすっかり手を引いていたからだ。重量級ゲームの面白さにどっぷり浸かってしまった結果、『ボードゲームは頭が熱くなるような思考性と戦略性が面白いんじゃ! 曖昧なルールでキャッキャ言いながらプレイするゲームは好きじゃないんじゃ!』と多少こじらせていたところに、このゲームをプレイする機会が訪れたのである。
正直ナメていた感は否めない。事実、先述の通りこの手のゲームは今後も自分からはプレイしないと思っている(だからといってゲームそのものを否定しているつもりは無いが)。だが誘われて実際プレイしてみると、悔しいことに面白いのだ。趣味で小説を書いていた過去があるので、他のプレイヤーより一層『物語を作っていく』という要素にある種の『熱さ』を覚えた。実際とある場面で語り手を引き継いでからは、結末カード以外の物語カードを全て出しきることに成功している。しかし、その後が続かなかった。結末カードの事を全く視野に入れず物語を紡いでしまい、結果としてその場からかなり遠回りをしないと結末に辿りつけなくなってしまったのだ。そのまま語り続けていても仕方ないので、素直にパスを宣言した(そうすることで山札から一枚カードを補充できる)。結局これ以降最後まで手札を出すことができず、他のプレイヤーがもの凄い結末カードで物語を終わらせ、『そんな終わり方ありか!?』と皆で驚いた。物語全体としてはオーソドックスな童話みたいな流れになったが、時折ツッコミを入れたくなる(だが面白かったので続行してもらった)展開が多々あって、なかなか楽しい一時を過ごした。

 

以下は、その時の物語を(多少分かりやすく)書き起こしたものだ。興味があったら読んでいただきたい。

むかしむかし、あるところに…

村がありました。家々が立ち並ぶその村は、今危機に瀕していました。なぜなら、近くの沼にある扉から魔物たちが溢れでて、村を襲いはじめたからです。村の青年は急ぎ王宮へ出向き、王へこのことを伝えました。すると王は、とある山の洞窟に居ると言われる竜をけしかけ、魔物を倒してもらえば良いのだと言いました。早速、王の命を受けた兵士達が洞窟へと向かいました。
しかし、その洞窟に居たのは死にかけの竜でした。これでは到底魔物に太刀打ちできません。急ぎ王宮へ戻り、兵士達は王へ報告しました。すると王は、それなら王宮付きの魔女に薬を作らせ、それを飲ませれば良いと言いました。王宮付きの魔女がその事を聞き、釜を使って薬を煮込み始めました。その裏でこそこそと動く人影がありました。それは宰相でした。なんと、彼が沼の魔物をけしかけ、村を、そして国を滅ぼそうとしていたのです。宰相は釜に変なものを入れて、薬をすっかりダメにしてしまいました。
その様子を見ていた人影がありました。それはとても賢い兄妹でした。彼らは宰相が良からぬことを企んでいるのを知ると、王宮の隅にある井戸へ向かいました。彼らは子供だったので、井戸の底に居る泥棒妖精にそのことを相談したのでした。すると小人は井戸から出てきて、兄妹と一緒に宰相の悪巧みを阻止しようと言いました。さて、魔女の釜にある薬をどうにかしなければなりません。小人はたいへん力持ちだったので、釜を軽々片手で持ち上げると、それを台所へと持って行きました。
台所で薬を作りなおそうとしたその時、どこからともなく飛んできた斧が、釜に刺さりました。釜には穴が開いてしまい、もう薬を作ることはできそうにありません。兄妹たちが見てみると、なんと斧を投げたのは村の青年でした。青年は、宰相に操られていたのでした。青年は兄妹に襲いかかろうとします。しかし、妹のあまりの美しさに、青年は正気を取り戻します。その隙をついて、妹が青年の胸に剣を突き立てました。青年は息絶える寸前、妹に不思議な指輪を託しました。
さて、兄妹がその事を話し、事の真相を知った王は、皆を連れ立って山にいる竜へと向かいました。魔女に新しく作りなおさせた薬を竜に飲ませ、王は魔物を倒して欲しいと言いました。ですが竜は、『それは人の世の事であろう。我には関係のない事よ』と飛んでいってしまいました。残された人々は、沼の扉から溢れ出てくる魔物に為す術もなく、ただ恐怖に顔を引きつらせながら国が滅びていくさまを見ていました。
みなさんも仲間を選ぶときには気をつけた方がいいということです。

いや、これ、よくこんなに続いたし、結末まで行ったよ、うん。すげぇ。

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