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Okeno Catanikus +T

非電源卓上遊戯の話題をつらつら綴ったり綴らなかったり。

インストって難しい?

 

「はい、そっちのが『大きな進歩』。『2釜』とか『3釜』とか、『井戸』とか『調理場』とかあります。目の前のボード。はい、これ木造の部屋がすでに二つあります。で、家族が一人ずつ。この人達を働かせます。で、こっちの大きなボード。ラウンドってあって、これが一枚ずつめくられていきます。で、ここ大事。収穫。収穫時には家族を食わせなければいけません。なので食料大事。超大事。で、手元にあるのが『小さな進歩』カードと『職業』カード。序盤はとりあえず食わせられないと話にならないんで、食料関連を優先して取ります。一枚ずつ取ったら隣の人に渡して下さい。あ、ドラフトってわかります?」

アグリコラ』って、複雑、だとは聞いたけど

複雑だとは知っていたけれど、ではどの辺りが複雑なのか。複雑なのに、どうしてボードゲームギークでずっと上位の人気を誇っているのか。あるいはその複雑さこそが人気の理由なのか。面白さを解明するには、自分がその面白さを身をもって体感するのが一番手っ取り早い。元々前からやりたいゲームではあったし、初心者卓があるというこのゲーム会なら、その辺りが掴みやすいのではないか。

そう思って参加したアグリコラの『初心者卓』で、上記のようなインストをされました。

一体何を言っているんだ…俺は何をしたらいい…?

この時点で聞きたかった最低限の情報は3つ。手番に何をするか、ゲームの終了条件、それとどうすれば勝利に近付くか、の3つでした。しかし、そのどれも充分に説明されることはなく、場にあるカードやタイルの説明が専門用語や略称を交えて行われ、『こうなると強い』という現時点では理解不能な戦術紹介が行われた後、『小さな進歩』カードと『職業』カードのドラフトが始まりました(後で知ったのですが、カードドラフトはあくまでバリアントルールとして記載されているらしく、『全プレイヤーが4、5回プレイした後でのルール適用が望ましいです』という注意書きもあるようです。少なくとも初心者卓で取り入れるルールではないようです)。

何をすればいいのかわからない状態で「とりあえず食料を確保できるカードが強い」と言われ、食料に関連してそうな記述のカードを取っていきます。が、文面にそれっぽいことが書いてあるから取っている、というだけで、ドラフトルールにおいて一番考慮すべき『カードの相互関係(コンボ)』どころか、そのカードがどのような効果を及ぼすのかも理解ができない状態でした。

ゲームが開始して、やっと自分のボードにある木製のコマ(家族コマ)を大きいボードに移動させて仕事をさせるのだ、という事が分かりました。ですが、依然として何処に置くと何が起きるのか、起きた結果得られる物が何の役に立つのか、といった情報は断片的にしか入ってきませんでした。その状況に応じて説明が入るのですが、「そこではこういう手が強いね」と言われても、何が起こるから強いのか、他にはどんな事ができるのかが一向に分かりません。結局序盤は言われたままにコマを置くしかありませんでした。

中盤を過ぎた辺りで手番にできることはなんとなく分かってきたのですが、既に他の中級者プレイヤーは中級者同士でキャッキャ騒ぎながら、初心者置いてきぼりで自分のプレイをひたすら進めていました。とりあえずどうあがいても、このルールの理解度では勝ちには行けないので、ルールの把握だけはしっかりしようとプレイ続行。ちなみに一緒に卓に入ったサークル仲間は、卓のマスターがスタンド化して取り憑いていて、背中越しにほぼ全ての手番において指示を受けていました。

これ、そんなに難しいことやってるか?

ゲームが終了して、時間も遅かったのでゲーム会を後にして帰路へつきつつ、サークル仲間に聞いてみました。「アグリコラ自体は面白かったけど、ルール分かった?」「いんや、全然」。ですよねーと言い合いながら、ルールの整理とそれを踏まえた上でのルールのインストの難しさについて話しました。確かに、毎回ゲームに使うカードが違い、一つ一つの効果と他との相互効果を把握できないと勝ちに行くのは難しい。故にそれを説明するのはもっと難しい、と思いました。しかし、中枢のゲームシステム、ワーカープレイスメントの部分に関しては、「ちゃんとルール読めば俺のほうが上手くインストできる自信がある」と思えてしまったのです。

手番にすることは、自分の農場にある家族コマを中央の盤に移動させて、効果を発動させる。効果は基本資源や食料、またはそれに変化し得るものを獲得するか、あるいは自分の持っている資源を元に増築やパンの生産などを行う。また他にも手番の始点変更や、農地の獲得といった効果に加え、ラウンド毎にオープンされていくラウンドカードで、家畜を飼ったり、家族を増やしたりできる。ゲームの最終的な目的は、規定ラウンド終了までに、家族を飢えさせず、自分の農地を全て開墾すること。農地を家や畑や牧場にすれば得点になる。逆に農地が残っていると得点が減るので、先を見据えて行動を選択していかなければならない。その際の指針となるのが、ゲーム開始時に配られる『職業』カードと『小さな進歩』カードで、これらを盤の状況と組み合わせることで、より一層自分の農地を進展させることができる。

ゲームに付いているルールを読んだ訳では無いのですが、自身のプレイと記憶、ネットで紹介されているルールから判断するとこんなまとめ方ができると思うのです。これを砕いてプレイに即して説明できれば、初プレイの人でもこのゲームが何をするゲームなのか、そこそこ理解できるのでは、と考えています。

インストとはマイルストーンを置くことと見つけたり

ゲームを始める前に行うインストの本質とは、『プレイ前の限られた時間で必須情報を伝える』という事だと考えています。その必須情報が、手番に何をするか、ゲームの終了条件、勝利条件の3つだと思うのです。そして、手番の説明をスタート、ゲームの終了条件と勝利条件をゴールと捉え、その間の道筋を示すもの、いわゆるマイルストーンを如何に少なく、分かりやすい場所に置いて『道』を作れるか。『筋道立てて説明する』という言葉がありますが、まさにその通りなのだと思います。

道を作るために必要なマイルストーンの数は、ゲームの難易度やプレイヤーのレベルによって異なります。となると、インストをする側の人間の想像力も重要になると思います。この人は自分の話をどこまで理解できるのか、あるいはできないのか。この言葉を出して通用するのか、否か。自分が同じくらいのレベルだった頃、こういう説明をされて理解できただろうか。そういった相手側に立った際の想像は、インストする側の人間にも、説明するという道筋の指標となるはずです。

今回参加した初心者卓でのインストはそういった想像力が一切感じられないものでした。何を知っていて何を知らないのかは、一目見ただけでは分かりません。となると、この卓におけるインストの最善策は『対面しているプレイヤーは何も知らないという前提で話を初め、分かるようなら会話の難度を少しずつ上げていく』だと思うのです。初心者大歓迎を謳っているのにも関わらず、インストが機能していない初心者卓を用意しているこのゲーム会に対して、プレイ後に残ったのは『初心者大歓迎』という言葉に対する不信感でした(プレイ内容とは別に『アグリコラ』が素晴らしいゲームだというのは良く分かりましたが)。

北斗の拳』のジャギ様になりたい

最近ニコニコ動画TRPG関連の動画ばかり見ているのですが、某動画で『北斗の拳』のジャギが、北斗四兄弟の中では一番拳の使い手としてはレベルが低かったものの、他人に教えるという点においては四兄弟のうちで一番評価されていた、という話を目にしました。

プレイヤーの信頼度は、単にプレイレベルが高いだけではなく、そういった対外的な事に対しても上手く対処できることで得られていくのではないでしょうか。プレイヤーとして成熟することにより、レベルの高いプレイができるようになるのも素敵ですが、同時に他のプレイヤーにルールやプレイの仕方を上手く教えられるような、ジャギのようなプレイヤーになりたいと、

最近、そう思ったのでした。

 

※この話をサークル仲間や知り合いに話すと、「いや、単純にインストした卓のマスターがハズレだったんじゃ?」と返され、確かにそうだとも思うのです。ただ他にも、使用するカードのデッキが初心者向けじゃなかったり、専門用語がインスト中やプレイ中に飛び交ったり、コンポーネントの扱いが乱暴だったり、意味分からないタイミングで盛り上がったりと、『初心者卓』と謳っているにも関わらず、ボードゲーム初心者が来たら絶対トラウマになるだろうなーと感じた次第でして。他プレイヤーや、この卓で言うのであれば初心者に対する気遣いにおいても、想像力って重要なんだと思います。